木村硝子店のグラスと私の日常 /004
心が躍るグラスである。
ビールだと350ml缶が泡まできれいにおさまる。
適当に注いでも、夏の雲のようなフタができ、
ふっくら黄金比になる。
飲むたびにゆらゆら動いて泡が消えにくく、
おいしく飲み干せるのがいい。
ワインは控えめに注ぐ。
すると、しなやかなフォルムが際立ち色っぽい。
香りがゆっくり広がり、余韻がおいしさへと繋がっていく。
脚が少し短く愛嬌と安定感もあって、食卓に馴染みやすい。
ただ、繊細な口あたりと華奢な脚には少し気をつかう。
「気をつかう」のはよく見ているということ。
力加減がわかる。
酔っぱらったら翌日に洗う。
なので意外と割らない。
巷には無数のグラスがあるが、
酒の肴になり得るものはなかなかない。
text:新貝 友紀(フリー販売員)
GLASS STUDY>
流しの販売員・新貝友紀さんの文章による、硝子やグラスについてのあれこれをまとめた不定期連載。