木村硝子店のグラスと私の日常/031
「小さきものは、みなうつくし」
基本に忠実であることは心地よい。
物の用途や事柄のルールは作成者の繰り返された試行錯誤の上に存在するような安心感がある。
ところが、ワイングラスにビールを注いでしまうように、定められた用途と私の使い方は必ずしも一致しない。
カクテルグラスとして生まれた"エイサ003"はワインの為にあるのではないか?と根拠のない自信を持ってしまうくらい、気難しいワインを気の置けない友人のような距離まで近づけてくれる小さいボウル。
農作物であるワインは人の関わりを超えて、あらゆる自然事象に左右されやすい。不規則で掴みどころがない故の魅力がある。
不安定な液体をグラスという型に嵌めようとするものだから、尚更にややこしい。この小さな矛盾こそ人間そのものではないか?などと空疎な確信をする。
形、液面の大きさ、立ち上がりの角度、手に取った時の収まりや、口に触れる角度…云々のテクニックではなくもっと、感情的に…
夕日を見て何故か切なくなるような直感でグラスを手にとってみるのも、たまには良いものだ。