木村硝子店のグラスと私の日常/035
かつて愛妻ならぬ愛コップとして毎日顔を合わせていたグラスがあった。
しかし月日は流れ、気がついたときにはその姿は消えていた。
逃げられた…いや割ってしまったのだ。だいたい私は粗忽な人間なのでよくモノを壊す(食器やグラスを割るのはだいたい洗いものをするときである)。
その後いろいろ浮気もしたけれど、やっぱりこれだと再び手に取ったのがこのパスタである。薄すぎず、厚すぎず、その2ミリというガラスの厚みが絶妙で、口当たりはもちろん、扱うのに神経を使い過ぎないのもいい。
そして何よりシンプルで「普通」なその佇まいが気に入っている。
そばにあって飽きるということがなく、どんな飲み物もおおらかに受け入れてくれる懐の深さがある。
普段使いはもちろんだが、私が愛用する6ozの小ぶりで控えめなサイズ感は来客時に飲み物を出すのにもちょうどいい。なんとも上品なのだ。
それにしてもこの「コップ然」とした姿、いいなあ。
text:大熊 健郎(CLASKA Gallery&Shop "DO"ディレクター)