木村硝子店のグラスと私の日常/037
私は小津安二郎が好きである。
小津の映画を観ていると、ときに小料理屋で、ときに同窓会の宴会場で大人の男たちが実にうまそうに、幸せそうにお酒を飲むシーンがよく出てくる。
そんなときである。「あーお酒が飲めたらなあ」と恨めしく思うのは。
全くの下戸というわけではないが、昔から酒が弱く、飲みの場でもひとり小声で「ウーロン茶ください…」と酒好きの友をシラけさせ、肩身の狭い思いをしてきた。でも近頃は食事に合わせて少しお酒を飲みたい、夏ともなるとやっぱりビールが飲みたいと思うようになった。
サンサ223はそんな私がビールを楽しむのにちょうどいいグラス。
型吹きの薄手グラスは口当たりが抜群で、まるでグラス自体が液体の粒子を細かくしてくれたかのように感じるほど。
そして柔らかく丸みを帯びたおしり、いや底部のデザインがなんとも可愛らしくモダンではありませんか。
text:大熊 健郎(CLASKA Gallery&Shop "DO"ディレクター)