木村硝子店のグラスと私の日常/041
それだけの為に存在しているモノが好きだ。
例えば栓抜きが付いていないソムリエナイフはワインの為に存在している。十徳ナイフのような便利さはないが、その不器用さというか専門性ならではの魅力がある。
自ずと、身の回りには用途が決められた道具があつまる。
多くのグラスは指針が既に決められていて、ブルゴーニュのピノノワールの為のグラスだとか、ボジョレーのガメイのグラス等々…多岐にわたる。
お目当てのグラスを確かめに、はじめて木村硝子店のショールームを訪れた時、無意識に目に止まった"ピーボ オーソドックス 62987-450"。
一見、モンラッシェのようなボウルに、見ているだけで緊張感が走る線を引いたようなステム。
ピーボ…(チェコ語で)ビール?
62987-450…型番?
オーソドックス…何が?
割れそう…
何用のグラス?
なんて浮かんできた疑問や合理性は「このグラスに何か注いでみたい!」という気持ちの前にすぐに消えた。
買った後で、理屈をこねくり回して用途を決めようとした時もあった。
今では、「何に注いだら良いのかわからず、困った時」についつい手が伸びてしまう理屈を超えたグラス。