木村硝子店のグラスと私の日常/055
カクテルグラスは数えきれないほど種類と形状がある。
厚みがあるもの、口径が広い、狭い、背が高い、低いなど何を基準で選ぶかバーテンダーの目利きによるところが多い。
この中から一番マティーニに合うものを探す実験をしたことがある。マティーニを作り、一脚ずつに30mlほど注ぎ、飲み比べをしてみる。飲み干さなくてもかなり酔う。それもそのはず、グラスは木村硝子店にあるほとんどのマティーニグラスを揃えた。総数約50脚。
酔うのが先か、見つけるのが先か中々痺れるテイスティングだったが、思いのほか分類は早く進んだ。丸いクープ型は甘みが出るがキレが出ない。グラスの縁が厚いタイプは甘みが出るが繊細さが出ない。こういう流れでタイプを決めて絞っていくと数種類が残った。
その中で香りがよく、繊細さも表現できたのが三組のカクテルグラスである。香りが表面を漂い、口に入るときに舌に乗ると甘さも感じる。これぞマティーニに合うベストグラスだと僕たちは思う。
今でもマティーニを出すときはこのグラスが欠かせないパートナーとなっている。
text : 南雲 主于三(Spirits&Sharing.inc CEO)