連載:おおたきワイン <ボージョレ>
秋深まる今日このごろ、今月はいよいよワインのお祭りボージョレ・ヌーヴォーです。
ボージョレ・ヌーヴォーとは
一言でいってしまうと、「フランス・ボージョレ地方の新酒のお祭り」です。元々は11月の収穫を祝うお祭りとして地元でひっそりと行われていたものなのですが、1967年にフランス政府が公式に認めたことを境に、世界中に広まることとなりました。解禁日は「11月の第3木曜日」と決まっています。今年は11月17日(木)です。
てっきり今回はボージョレ・ヌーヴォーのお話かと思いきや、有名な新酒のお祭りの影に隠れがちなボージョレ地区の美味しいワインについて教えてくれました。
ボージョレ?
ヌーヴォーのイメージしかない。
いいえ、美味しいワインを作っているんです。
ボージョレで作られている主な品種はガメイ(赤)とシャルドネ(白)、基本的にこの2種類です。白ワインに関しては数パーセントしか作られていません。ほぼガメイを作っているわけです。
ガメイはよくピノ・ノワールに似ていると言われます。ピノ・ノワールの特徴としては淡い色、苺の果実感、渋みが少なく酸味がある、という点ですが、ガメイはピノ・ノワールよりも酸味が穏やかで果実の輪郭がはっきりしている感じです。また湿っぽい香りやしっとりした感じと親しみやすさもポイントで、この湿った感じはおおたきさん曰く産地が川沿いにあるからだそう。そしてボージョレのキーワードは、「ゆるさとちゃんとしたさ」。この2つを併せ持ち、親しみやすさを感じさせるボージョレのワインは何と言っても食事に合うんです。気兼ねなく家族や仲間たちと囲むような食事のシーンにはボージョレが一番。
ところでどうしてボージョレでヌーヴォーが作られるんだろうかと言うと、早飲み用のワインを作っても楽しめるからというポイントをガメイが持っているからだそう。新酒は他でも作られていますが、ガメイが収穫量が多いということも理由の一つかもしれません。実が大きく収穫量も多いため、昔は質より量で安ワインが沢山作られていました。いまでもフランス国内でさえボージョレというと“安ワイン”のイメージを持っている人もいます。
ガメイはどこで作られているんだろう?というと、仏国内の他産地や他国でも栽培されていますが、なんといってもボージョレが一番沢山作っているらしいです。
ガメイの特徴は
親しみやすさと湿っぽい香り
そして何より
ボージョレのワインは食事に合う!
今回もアズマコーポレーションさんよりワインを持参頂きました。
まずおおたきさんが取り出したのは2本のワイン。
「これは何ですか?」
「どっちもピノ・ノワールのワインです。」
「…ガメイじゃないんですか?(ボージョレの話は?)」
まあとりあえず飲んでみましょう。
【品種:ピノ・ノワール100%】
まず左を。
ちょうどいい酸味と渋みで、上品な感じ、可愛らしい感じがします。
ピノ・ノワールって感じです。
【品種:ピノ・ノワール90%+ガメイ10%】
次に右を。
同じピノ・ノワールでも全然違います。
さっきのよりもカジュアルな感じで、ちょっと湿っぽい香りが。
あれこれってもしかして…。
「そうです!これを飲むとボージョレの味と香りがするなぁと思うんです。左はブルゴーニュ・シャブリにほど近いシトリーという場所で作られたピノ・ノワール、右はボージョレの一番南にある・ブルウイィで作られたピノ・ノワールです。同じ品種でもブドウを作る場所が違うと全然違ったものになるんです。土地の味を比較することによって、ボージョレの味ってこんな味なんだ!っていうのを知ってもらおうと思いました。」というおおたきさんの作戦はみごとに成功で、ワインはブドウの味だけでなくて土地の味も重要な要素なんだと改めて思いました。
ボージョレ地区の格付け
ブルゴーニュとコート・デュ・ローヌという偉大な産地に挟まれたボージョレ地区。地区内にもランク分けがあり、下から、ボージョレ、ボージョレヴィラージュ、クリュボージョレとなり、クリュボージョレと名乗れるワインはきちんと作っていてとっても美味しいワインです。10の村がクリュボージョレを作っています。
火山性土壌の地質のボージョレ地区は南北約30kmに渡っています。木村硝子店(湯島)基準にすると、湯島から大崎くらいです。冷涼な北から温暖な南、また山間に畑が位置すること、同じ土壌でも岩や砂の大きさが異なることなどから、同じボージョレ地区内でも様々な味わいを伺えます。
さてクリュボージョレ飲み比べは、北に位置するJulienas(ジュリエナ)、真ん中あたりのMorgon(モルゴン)をお持ちいただきました。
同じデザインのボトルから分かるように、この2本同じ生産者によるワインです。
レストランでクリュボージョレを頼むと(ボージョレがあるレストランは少ないのですが…)だいたい置いてあるお店はモルゴンかムーランナヴァンが多いんだそうで、ジュリエナがあるお店は嬉しくなっちゃうなぁ!という感じらしいです(笑)。ちなみにアズマコーポレーションさんが今年出会った生産者さんなんだそう。飲んでみて驚くのは、ぜんぜん違う味わいがするところ。同じ品種、同じ生産者、同じヴィンテージ、もちろん作り方は同じ、ではあっても土壌が違うことで全く異なるキャラクターを味わえる、これもボージョレの楽しさです。
この2本のワイン、認証(※1)は何も取っていないそうですが、やっていることはスーパーオーガニックで、手を加えていないからこそ土地の個性がそのまま味わいに出たワインが出来上がっています。
※1…ビオワイン認証団体によるもの
偉大な産地に挟まれた
フランスで最も贅沢で
日常的なワインを作る産地
おおたきさんはボージョレが大好きだそうです。
アズマコーポレーションさんはレストラン中心に営業を行っているため、ボージョレがレストランで飲めたら嬉しいなぁと思っています。あとはやっぱり“ヌーヴォー”というイメージがあるけれども、ボージョレはすごく恵まれた土地で色んなワインを作っているっていうことをもっと沢山の人に知ってもらいたい、という思いも。
今回はそんなボージョレ愛にあふれた回になりました。
今年のヌーヴォーのお祭りを楽しみつつ、ボージョレのワインへの興味をもっと皆さまに持っていただける回になっていると嬉しいです。
さて次回は冬にシュワシュワ “シャンパーニュ” です!
<今回のワイン>
シトリー・レ・ダーム・ピノ・ノワール
コトー・ブルギニョン・ルージュ・キュヴェ・アロブロジカ
モルゴン・コルスレット
ジュリエナ・ロシェ・ブルー