グラスの曇り肌診断
text : Yuki Shinkai
はじめは美しい透明感のあるグラスだったのに、いつのまにか曇っていたり、くすんでいたり、ざらついていることはありませんか?
原因はいくつかあるようです。
A シミのように、ポツポツと
水道水に含まれる複数のミネラル成分が固まり、水滴がポツポツとした跡になって白く残るのがウォータースポット。いわゆる水垢のことです。グラスを洗ったあと、水滴を拭かず自然乾燥したときに現れやすく、そのまま長い間放置していると、白っぽく固まっていることがあります。洗うたびに丁寧に拭いていれば問題はありませんが、いったんこびりついたものはなかなか取れません。
人間が年を重ねて知らない間にできている、お肌のシミのようなもの。せめてグラスのシミぐらいは取って、すっきり澄んだ肌を取り戻したいですね。
ミネラル成分はアルカリ性なので、中性洗剤で洗うだけでは取れません。酸性で中和するので、酢やクエン酸などを水で薄めて一晩浸してみてください。つやを取り戻して、ピカピカになりますよ。
※長年蓄積されたようなものは下の方法でも取ることが難しい場合があります。
B 全体的に、もやもやと
つるりとしたグラスの肌。見ても触れてもわかりませんが、実は凸凹しているのです。湿度の高い日本だと、その凸凹に潜んでいるソーダ灰(注1)が、人が汗をかいたような状態になることも。
しばらく使っていなかったり、箱にしまい込んでいた場合、その場所で湿度が高くなると、ソーダ灰がグラスの表面にダラダラと噴き出し、低くなるとピタリと止まる。目には見えなくとも、静かにそれを繰り返しているのです。人は汗をかいても、その都度シャワーを浴びればさっぱりできますが、グラスは自ら浴びることができないので、じわりじわりと覆う面積が拡がり、白く曇っていくのです。触ってにおいを嗅ぐと、ツンとすっぱい汗のよう。グラスって生き物みたいですね。さっぱり洗い流してあげましょう。
たっぷりのぬるま湯と中性洗剤で、丁寧に洗ってください。透明感が戻ります。
取れなかった場合はこんな方法も。
※非常に頑固なものの場合は取ることが難しい場合があります。
(注1)ソーダ灰…ガラスを形成する成分のひとつ。炭酸ナトリウム(Na₂Co₃)。白色の粉末で吸湿性がある。
C 細かいキズで、ざらざらと
日常使いの手頃なグラスは、扱いもお手入れも簡単に済ませていることが多いのではないでしょうか?忙しい日常の中では気を使わない頼もしい存在ですが、長年使い続けていると、細かいキズがつき、ぼんやりと白くざらついて見えるものがあります。
残念ながら、キズに関しては対処方法はありません。
その状態で使い続けていると蓄積疲労となり、何かしらの負荷がかかった拍子に割れたりすることもあるので、くれぐれもご注意を。
『GLASS STUDY』は流しの販売員・新貝友紀さんの文章による、硝子やグラスについてのあれこれをまとめた不定期連載です。