耐熱ガラスと強化ガラス

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text : Yuki Shinkai

キンキンに冷えていたり、氷が入った飲み物は、グラスの表面に水滴がつき、手にひんやりを感じながら、乾いたのどをキュッと潤してくれます。熱い湯気が立ち、グラスの内側がほんのり曇る飲み物は、手にぬくもりを感じながら、冷えた身体をじんわり温めてくれます。透明なグラスは、その時々に欲している飲み物の色と温度を一瞬にして伝えてくれる、おいしいうつわなのです。毎日楽しみたいですね。

では、温かい飲み物に使えるグラスって、どんなものがあるでしょうか?
まずはガラスが割れる原因をあげてみましょう。

冷たいグラスに熱湯を注いだり、熱くなっているグラスを急冷したりの急激な温度変化や、高い所から落としたりぶつけたりしたときの衝撃など。それらを少しでもやわらげようとしてできたのが、<耐熱ガラス>と<強化ガラス>です。<ソーダガラス>(一般的に多く使われているガラス)がつくられる工程に、熱に強い原料(硼酸など)を加えたり、衝撃に強い処理加工(全面物理強化、口部強化など)を施したものになります。

言葉の響きからか、「安心」や「安全」、「多少雑に使っても平気だろう」という印象を持たれる方が多いようです。ただそれぞれ特性も違うので、正しく理解して、扱い方にはくれぐれもご注意を。割れないガラスはありませんからね。

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耐熱ガラス 
/急熱・急冷の温度変化に強い

まずは、購入時に品質表示を読んでください。
(電子レンジ用)(直火用)(オーブン用)などの使用区分と、使用上の注意点が、それぞれ表示されています。<耐熱>だからといって、どんな熱源や温度にも対応するものではありませんので、必ず確認してください。熱による膨張率を小さくして割れにくくしたものではありますが限度はあり、破損する場合があります。特に熱いものを扱っているときは、くれぐれもご注意ください。

強化ガラス 
/衝撃につよい

一般的に全面物理強化と口部強化という加工方法があります。
全面物理強化は、加熱急冷によってグラスの表面に※圧縮応力を発生させて、表面全体を強化する方法。

衝撃に強いということは耐久性があり、日常で気楽に使えるグラスという魅力があります。メーカーによっては電子レンジOKや食洗機OKとなっておりますが、なるべく避けた方が良さそうです。新品のうちは良いのですが、レンジや食洗機の熱衝撃の繰り返しや、あちこちにぶつけたり落としたり、ガチャガチャと雑に重ねたりしながら、長年使い続けていくうちに、目には見えない小さな傷が溜まって、ある時、触れていなくても、粉々に飛散する場合があるからです。

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口部強化は、加熱急冷によってグラス表面に圧縮応力を発生させて、口部の強化のみを行う方法。こちらも口部のみとはいえ、一番割れやすい部分の強度を増してくれているのはうれしいですね。こちらは全面物理のように急に粉々になることはありません。
割れ方は、ソーダガラス(一般的なグラス)と同じで原因によって違ってきますが、大きな破片になることもあるのでご注意ください。

※参考文献 http://www.glassman.or.jp/info1005.html

<耐熱ガラス>や<強化ガラス>はそれぞれ、やや熱に強い、やや衝撃に強い、ぐらいのきもちで、他のガラスと同じように丁寧に扱ってください。
そうするとより長くお使いいただけますよ。

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今回おすすめしたいこと

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実は、耐熱や強化ガラス以外でも、温度差の感覚を身に着けてしまえば、温かい飲み物を入れても楽しめるんですよ。薄くて厚みが均等なものは、熱の衝撃が一瞬で全体に伝わるので<意外と>大丈夫なのです。

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ただし、取っ手があるもの、脚付きのもの、底が厚いものは、ガラスの厚みが均一ではないため、熱の衝撃が不均等に伝わり膨張のズレが生じて割れるので、避けてください。

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冬の食器棚や冷えた部屋にあったグラスに、いきなり温かいものを注ぐと割れます。かるくぬるま湯で洗って温度差を縮めてから注いでください。熱めのお湯で洗ったグラスにキンキンに冷えた飲み物を入れても割れます。JIS S 2043に基づく社団法人日本硝子製品工業会の見解としては温度差35℃と言われていますが、木村硝子店では、50℃程度の温度変化なら使用に耐えられるとしています。

木村硝子店さんをはじめて訪ねたときに、薄いグラスに温かいお茶を出して頂いてびっくりしましたが、とても新鮮で素敵に感じました。皆さまにもぜひ、その感覚を味わっていただきたいです。

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愛用されているグラスで試すのにためらいがある方は、ぜひショールームで「GLASS STUDYを見たんだけど」と声をかけてください。グラスに熱湯を入れる体験をお試しいただけますよ。

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注)上記の事柄において、ガラスが割れないと保証するものではないことを、予めご了承ください。

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『GLASS STUDY』は流しの販売員・新貝友紀さんの文章による、硝子やグラスについてのあれこれをまとめた不定期連載です。

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