グラスで冬のぬる燗をのんびり楽しむ

グラスで冬のぬる燗をのんびり楽しむ

お酒と料理とグラスと <第2回>

IMADEYAのお酒と、minokamoの料理と、木村硝子店のグラスのコラボ企画。

毎回1つのお酒に対して、2つの異なるグラスでどのように楽しみ方が変わるのか、またどんな料理に合わせると良いのかを、IMADEYA(お酒)の白土暁子さん、minokamo(料理/撮影)の長尾明子さんと一緒に紹介していきます。

第二弾は、日本酒について。グラスでぬる燗を楽しむ方法とお正月のお祝いにぴったりなグラスをご紹介します。

 

新しい年の始まり
お祝いの席にぴったりのグラス

今回のグラスはこちらの2種類。
冷酒には木勝2ozショットシリーズ(左)、ぬる燗用にはTU306タンブラー1(右)

木勝2ozショットとTU306タンブラー1

さてまずは冷酒を楽しむ木勝のショットグラスから。

minokamo「美しいグラスは背筋が伸びるよう、新年を迎えるのにぴったり!」

白土 「お正月は漆など色のある器を使うことが多いので、凛としたこのグラスの輝きは存在感がありますね。  

ー木勝シリーズは、木村硝子店のデザイナーである三枝静代によって作られた約130種類に及ぶ切子のシリーズです。社長が集めていたヨーロッパのアンティークグラスなどをデザインソースにしていますが、和のテーブルにとってもよく合うと思っています。あと、切子のデザインって絵柄が描ければデザイン出来るかというと全然そうではなくて、切子の道具や技術を把握していないと出来ないデザインなんです。

木勝2ozショットとTU306タンブラー1

ーさて早速飲んでみましょう!
木勝シリーズについて気になる方はこちら>

minokamo「骨太な風味でありつつ、軽やかな喉越しですね。そしてラベルがかわいい!縁起物の瓢箪ですし、新年のお酒にも良いですね。」

白土「キリッと冷やした冷酒にはこのグラスの形状が相性良く、飲み口は甘みを感じますが、後味はスッキリといただけます。日本酒のように透明なお酒であれば、グラスに入れても全体の模様が楽しめるので、木勝グラスに入れるには特にお勧めです。お酒を入れた時の模様の揺らぎを見るのも楽しい!

minokamo「日本酒はもちろん、自宅でbar気分を楽しむときに、バーボンやウイスキーのストレートも楽しみたいです。」

クスクス風サーモン紅白なます

合わせたお料理は遊び心をプラスした紅白なます。

minokamo「今回のお料理はどちらもお正月感を出したものにしました。小さな角切りにしたので、野菜のしゃっきり感を楽しめ、スモークサーモンでお酒がすすむ旨味と風味を出しています。通常のなますのように千切りにしても大丈夫です。」

ー普通のなますと違うポリポリ感!サーモンが入っているの美味しいですね。

白土「骨格のあるお酒なので、角切りにした噛み応えのある人参や大根の食感もよく合います。サーモンの旨みが、骨格に隠れたお酒の旨みを引き出してくれますね。」

minokamo「1名分づつ小さなグラスに入れると箸でも食べやすく、もしくはスプーンでいただいても。意外な紅白なますの使い方は、温かいご飯にかけても美味しいですよ。」

Shiro 50px

TU306タンブラー1

お燗によって
柔らかくも厚みのある味に

次にぬる燗にしてみましょう。グラスはデンマーク出身のデザイナー、Tora・UrupさんによるTU306タンブラー1で。

minokamo 「このグラスって耐熱ガラスなんですか?

ー実は耐熱ガラスではないのですが、グラスの形状によっては温かいものを楽しむ事が出来ます。薄手で厚みが均一なものは、熱が同時に全体に伝わるので意外と使えたります。取っ手があったり、足が付いているようなものは使えませんが。あとは、グラスと飲み物の温度差を小さくしてあげることもポイントです。

minokamo「グラスがキンキンに冷えていたらNGってことですね。室温くらいなら大丈夫でしょうか?」

ーぬる燗程度なら、大丈夫だと思います。

白土「ガラスの器をお燗に使うのはあまり一般的ではありませんが、ガラスならではの良さも。お燗酒から立ち上がる湯気が綺麗に見えて、より温かみを感じられたり、お酒の色を楽しむのにも、ガラスが一番。ワインの赤白のようにはっきりとした違いはありませんが、色を見ることによって熟成度合いなどが分かり、どんな味なのか予想するという楽しみもあります。」

グラスと温かい飲み物の付き合い方について、詳しく知りたい方はこちら をどうぞ。

ぬる燗のつくりかた

minokamo「ではここで、簡単なぬる燗の作り方を!」

《鍋に水を入れ沸騰したら火を止めて、日本酒を入れた徳利を鍋へいれる。お湯は徳利の半分程が浸かるくらいでOK。3〜5分程度置いたら引き上げて、ぬる燗の完成!》

minokamo「ちなみに私は普段からこの方法で、ストウブやル・クルーゼなど鋳物の鍋を使ってぬる燗や熱燗を作っています。鋳物だと保温時間が長いので火から外してもしばらく楽しめるんです。今回はぬる燗なので、雪平やステンレスなどの鍋でも大丈夫。温かさが足りないときは、また入れてみるくらいのラフな感じで楽しんでみましょう。」

黒糖胡椒の鰤照煮

ぬる燗は旨みたっぷりの黒糖胡椒の鰤照煮と合わせていきます。

白土「お燗によって柔らかくも厚みのある味になったお酒の旨みと、コクのある鰤照煮との相乗効果でリッチな味になりますね。黒胡椒もお酒に潜んでいたスパイシーな風味を引き出して来て、通常の照り焼きとは一味違う味わいに。」

minokamo「冷酒の時よりも甘みを感じ滑らかな印象。ぬる燗でより鰤照煮の旨味をが引き立ち好相性です。つい飲みすぎてしまいそう(笑)。黒胡椒のスパイシーな風味ともよく合います。私は熱燗も試しましたが、キレが強くなったのでぬる燗の方が好みです。飲み進めて常温になった味の変化も楽しいですね。」

ーグラスの形状的に口の中全体にふわっと柔らかく広がるので、ぬる燗の優しい旨みと合いますね。

minokamo「おちょこ型なので、グラスながらもぬる燗気分が高まります。お重に入れて汁気がある紅白なますなど入れたり、プレート盛りで合わせてニュアンスをつける盛り付けも楽しめそう。」

 

お重につめたおせち

お祝いの席にも、のんびり楽しむにも
温度やグラスを変えると違った顔が見えてくる

今回の"簡単ぬる燗作り方"や、"温かい飲みものとグラスの使い方"など、ちょっとの工夫で楽しみが広がると思います。同じお酒でも、しつらえを変えたり、温度を変えたり、こちらもちょっとした一手間でもっと楽しむことが出来ます。

冬のグラスの楽しみ方を是非みなさまも試してみてください。

 

【今回のお酒とグラス】

山形正宗 1898

山形正宗 1898
産地:山形県天童市

山形正宗の一番の特徴は、ミネラル豊富な山寺からの伏流水を使った硬水の仕込み水。この水を使うことによって、骨格のあるきりっとした味わいとなります。「山形正宗1898」は、元々野生種として存在していたお米の1つ「雄町」米を使用。雄町から造られるお酒は、力強く豊富な旨みが特徴ですが、山形正宗の場合はただ旨みが強いだけでなく、硬水で仕込まれることによってミネラル分が旨みの輪郭を造り、味わいにスマートさを感じます。この味の輪郭は、冷やして飲むとお酒を凛としたものに、温めると旨みを下支えする厚みとなり、表立って味に出るものではありませんが、重要な役割を担っています。

左: 木勝2ozショット シリーズ
右:TU306タンブラー1

 

【今回の料理】

クスクス風サーモン紅白なますと黒糖胡椒の鰤照煮

クスクス風サーモン紅白なます(2〜4人分)

・大根 150g
・人参 50g
・スモークサーモン 20g
・酢 大さじ1と1/2
・きび砂糖 大さじ1
・塩 小さじ1/4

1)大根と皮をむいた人参は、5mm角にカットする。5mm幅千切りにしてから5mm角にカットしています。それぞれし易い方法でカットされてください。スモークサーモンは、みじん切りにする。

2)1をボウルに入れ1時間以上馴染ませたら出来上がり。仕上げにいくらをのせても。

黒糖胡椒の鰤照煮(4切れ分)

通常だと1切れで1名分ですが、お正月はお節料理があるため半量にしてあります。

・鰤 2切れ
ーA(混ぜておく)ーー
・黒糖 大さじ2(20g)きび砂糖でも可
・日本酒 大さじ1
・みりん 大さじ1
・醤油 大さじ1
ーーーーーーーーーー
・生姜スライス 4枚
・片栗粉 適量
・粗挽き黒胡椒 適量

1)鰤は半分にカットする。生姜は千切りにする。鰤の肌が見えるくらい少量の片栗粉をはたいておく。
2)フライパンにA、生姜、を入れたら強火で加熱しフツフツしたら鰤を入れ、フライパンを傾けて鰤が煮汁に浸かるようにしつつ加熱し、2分ほどしたら裏返す。1分ほどして、煮汁がとろみがついてたれが少し残ってる程度になったら火を止める。水分が飛びすぎで焦げ付かないように注意する。火を通しすぎると身が硬くなるので加熱時間を3分~3分30秒を目安にします。※煮汁がまだたっぷりあり、鰤に火が通ってるときは、一度鰤だけ取り出して煮詰める。
3)2を器に盛り付け、粗挽き胡椒をかけたら出来上がり。

 

【プロフィール】

minokamo(ミノカモ)

料理家・写真家。岐阜県美濃加茂市出身、東京と岐阜が活動拠点。祖母との料理経験が料理活動のきっかけで、地の食材を活かした料理提案、郷土料理の紹介にも力を入れ、食卓が豊かになる器使いの提案も各媒体でしている。日常いただくお酒も、料理やシチュエーションによりグラスの使い分けを楽しみ中。近著に郷土食の取材をまとめた「料理旅から、ただいま」(風土社)
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白土暁子(シラトアキコ)

千葉の酒屋「IMADEYA」にて、イベント企画やワインのバイヤー、飲食店営業などを担当。普段から飲食店の方にもお酒とそれに合う器の提案をしている。月に一度は国内の造り手を訪ねたり、様々な地域のレストランに行ったりと各地に足を運び、どこにでもいるとよく言われる。
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IMADEYA白土暁子さん、minokamo長尾明子さんは、「あきこ」仲間として、美味しい発見を求め国内外旅をしたり、食、お酒を楽しむ会を各所で開催することもあり。

 

第1回はこちら
"お手頃スパークリングで前菜もメインも"